彼女日記

今朝、彼女は泣きそうな顔をしてこちらを見ていた。

 

「怖い夢をみたの…」

 

彼女は毎日夢を見る。

そして、その夢によって一日の気分がかなり大きく左右される。

 

彼女の夢の内容はこうだ。

合唱コンクールでピアノを弾くことになったのに、本番になってピアノの上の楽譜をみたら、見たこともない曲だった。

 

でもその日は本番だし、ピアノがちゃんとしてないなんて皆に迷惑をかけるだけだ。

他のクラスはずっとこの数ヶ月練習してきた。

ここで自分が弾けないと、今まで何をやってきたんだと言われてしまう。

しかし、彼女は今初めてこの楽譜を見たのだ。

でもそんなことは、誰にも伝わらない。

伝えたところで信じてもらえない。

そんな焦りから彼女は目を覚ましてしまったようだ。

 

合唱コンクールなんてないよ。

と優しく彼女に伝えても、聞く耳を持ってくれなかった。

 

彼女は繊細だ。

きっと今日大きな商談があるからその緊張からそんな夢を見てしまったのかもしれない。

 

私は美味しい紅茶を入れ、彼女の大好きなクラシックをかけてあげた。